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NO11-4『私の息子=孫の成長を知った介護生活』

被介護者 義母 91歳    介護者 嫁 50歳

義母が、認知症ではないかと病院をはじめて受診した時私は32歳、だった。
それから18年、早いもので私は今年ちょうど50歳、義母も92歳になった。
当時、認知症は治す薬も無いといわれて今のような介護保険も始まっていなかったので、介護する家族にとって先が見えずたくさんの困難にぶつかってきた。



今、義母も私も穏やかな日常を過ごせるのも、木野先生や介護の仲間、
ケアマネを始めとするいろいろな介護サービスのスタッフ

また、私達をいたわってくれる夫の姉達、たくさんの力添えがあって

支えられていることに感謝している。

 


ただ、気掛かりに思っていた事は、息子の事だ。
彼が物心ついた頃にはお婆ちゃんは認知症で、甘えたりわがままを言ったり
普通に話しをして遊んでくれる優しいお婆ちゃんではなかった。

 

いい思い出より怒っていたり混乱して家を出て行ってしまうお婆ちゃんを
一緒に追いかけたり、嫌がるおばあちゃんを車に乗せてデイサービスの
送り迎えもよく一緒に行っていた。


私としては、息子が我ままをあまり言わず手が掛からない分、
自分の気持ちを出さないのが心配で、5、6歳くらいだったか
「おかあさん笑って」と言った言葉は今でも深く胸に残っている。
母親がニコニコしていないと家の中が暗くなってしまう、
子供にとってはそれが一番辛い事だから。


家でも学校でも周りの雰囲気を明るくする存在であったけれど、
それはお婆ちゃんの介護で落ち込みがちな私の気持ちを察しての

ことではないかと思うと本人は意識してないと思うが、少し不憫に感じてしまう。

 


だから息子にとって今お婆ちゃんはどんな存在なのか気になっていた。
話し掛けてもことばを返す事もないお婆ちゃんにどう接していいのか

わからないのかベッドで過ごすお婆ちゃんのそばに行く事もなく

少し距離を置いておばあちゃんを見ているようだった。

 


お婆ちゃんの痰の吸引は普段、夫が夜中2~3回起きてやっているが、
正月休みに帰省していた時夜リビングでテレビを観ていた息子が、
隣の部屋のお婆ちゃんの痰がらみが気になったのか、痰の吸引をしてくれた。
いつものように、夫が吸引の為に起きていくと「今お婆ちゃんの痰とったよ」
とテレビを観ながら言ってきた。
些細な事だけれどお婆ちゃんの様子を気に掛けてくれた事が私も夫も嬉かった。



息子との普段の会話の中で私がおばあちゃんの様子を話す事はあっても、
息子から尋ねてくることはなかったが介護の様子は見ていたんだと改めて思った。


おばあちゃんをいたわる気持ちがある事をこんなふうに知ることが出来て良かった。
少し、大人になったのかなと、息子の成長を実感したお正月だった。